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ミヤハラヨウコの日記

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文章にしてみよう思います

 


2014/12/18  始発電車をまちながら

2014年12月、100周年をむかえる東京駅があのように修復されて
つまらない駅ビルに立て替えたりされなくて、本当に良かった。
戦前の東京駅が約30年、戦後の姿が約70年ということで
本来の姿は、戦後の東京駅であるという意見もありますけどね。
空中権を売って改修費にあてた話もよかったと思います。
ただし周辺の空はこれからますます狭くなるのでしょう。

こうなってくると駅前ロータリーがいかにも残念。
タクシー専用の駅前教習所かと思います。
馬車まわしをイメージするとか、
なにもない広い芝生の広場にするとか、
もちろんこれから整備されるのでしょう。
東京の顔になる美しい広場にしてほしいです。

去年の雪の日、駅舎をみるついでに、東京駅ステーションギャラリーで
「始発電車をまちながら」という展覧会の
クワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》作品を見てきました。
おもしろくて、10回あまりもリバースしてしまいました。

LED電球を装着した鉄道模型が、家庭用ミシンのボビンや、電子機器の外壁パンチパネル、
三角定規、エアコンフィルターのトンネル、洗濯バサミや、給食室の青いざるを通り抜けると
まわりの壁と天井にその影が映し出されるという作品です。
なんのことか全くわかりませんね。

ボビン群の横をミニチュア列車が通り過ぎるとき
列車にとりつけられた電球が
壁にその影を大きくうつします。
するとそこに現れるのは、ロール状の牧草がころがるなだらかな丘陵の放牧地。
思索する宮沢賢治の姿も見えます。
レールはつづきます。
港湾地帯の集荷場から
超近代的な巨大都市へ
えんえん続く赤いフェンスの先には
三角定規の近未来建築群
連続アーチの橋脚を横に見て
洗濯バサミの鉄塔群、送電線をやりすごし、
エアコンフィルターのトンネルを抜けると
歴史を感じさせる巨大ドーム=プラスティックざるの終着駅に到着するのでした。
そして列車はゆっくりと始発駅に戻るので、
今来た線路を逆回転、なのでリバース。

私たちはミニチュア列車の乗客になって
この場所で何度も何度も「旅」をする。
ウチにも一つ欲しいくらい、気にいりました。

列車の旅は、乗っている人たちをみるのも
車窓を眺めるのも、たのしくていいです。
それだけしかしなくていいというところが気にいっています。
ちょっとした旅気分を満喫してきました。

ステーションギャラリー内の階段をおりる途中では
燃え残って炭化した木片をかかえこんだ、レンガ壁を間近にみることもできます。
空襲の火事の痕だということです。
太平洋戦争は、はるか以前のことと思っていましたが
こんなに生々しい痕跡がのこっていました。

江戸時代、丸の内は、名前が示す通り江戸城内にあたり
時代劇でも耳にするような大名のお屋敷が立ち並んでいました。
海が、もっと近かったことでしょう。
時代かわって、明治。ここは陸軍の駐屯する場所となり
あれた一面のススキッ原。狐狸に化かされる話なども多かったそう。
その後、岩崎弥太郎に払い下げられました。
外堀は埋められ、道や線路に姿をかえました。
個人的には、古い丸ビルものこしてほしかったです。

 

2014/6/20  ザクロ

梅林の一角に、ザクロの樹を見つけた。
特徴ある質感の朱色の花は、どこか暗くて
葉は、これまたぴっかぴかの緑色なのに
全体としては陰のある立ち姿。
ザクロは、なんでああも不思議な空気をまとっているんだろう。

人間の子どもをとって食う鬼子母神が
「もう人を食べてはいけない」とお釈迦様からもらったザクロ
その実はほんとかどうかしらないが「人肉の味がするから」というオマケがついていた。
アダムとイブの食べた実は、リンゴではなくザクロだった?
なんていうお話もきっと一役かっているにちがいない。

関係ないけど、ザクロの大木って見た覚えがない。
そういう種類は、灌木ってよばれた。はんたいに背の高い樹は喬木っていうらしい。
今は分かりやすく低木、高木。

藤原新也の風景写真は、もうはやりじゃないと思うけど
陰のあるザクロの樹や
独特の香りのするイチジクの茂み
重量感あるビワの大木なんかを
実際、彼の写真として見た覚えはないのに
そのまま藤原信也ふうの写真になって思い出されたりする。
世の中にひとつのスタイルとしてうけいれられたからなんだろう。
そこにあるような、ないような記憶のあり方が、そんな気にさせるんだろう。

2014/4/27  映画「ニーチェの馬」

「ニーチェの馬」とは
哲学者ニーチェがホテルのドアを出たところで
動こうとしない馬を、御者がはげしく鞭うっていた。
ニーチェは馬の首にだきついて、それをやめさせようとしたのか?
暴れだして、警察の厄介になる騒ぎだった、と
物の本にはかいてある。
それ以降、ニーチェは狂ってしまったと。
そして「ニーチェの馬」はあれからどうなったのか?
タル・ベーラ監督、自ら最後の映画と公言。

渦まくような強い風。
異様に汗をながして、走り続ける馬。
御者の家には、娘がいて
厩で、馬具をはずし、水と飼い葉を与えてくれるが
馬はなにも口にせず
翌日、馬はもう一歩も走らない。

娘は、井戸の水を汲んで、ジャガイモをゆでる。
一言の会話もないまま
ジャガイモひとつの夕食を終える父と娘。

映像はぎりぎりまでシンプルで
まばたきもせずつづいていく。
だから妙に映像が残る。

物語らしい展開もほとんどなく、吹き荒れる風は、やむ事がない。
井戸が涸れた。
薪に火がつかなくなり、ランプにも明かりはともらない
暗闇のなかで声はするけれど
もうなにも見えない。
古いSF映画でも見ているようだった。

ニーチェの本は一冊も読んでないし
その生涯も詳しくは知らないけれど
なぜ、精神が崩壊し始めたときが、その時だと断定されるのだろう。
もしかしたら、馬に抱きつく前すでに狂っていて
そのせいで、馬に抱きついたかもしれないのに。
その方がドラマチックだからというだけではないんでしょう。

風が強い日は海に三角の波が立つ。
こういう時、魚たちは、水中で大人しくしているんだと
釣り好きが言っていた。
「風が吹きやまない」とは、いやなものだろう。
湿気をふくんだ微風ならまだしも
乾燥した強いかぜが、やむ事なくふきつづけたら、
自然界にも、人の精神にも、影響は大きいと思う。
ミツバチがいなくなるのと同じくらい?
またはそれ以上のダメージがあるのじゃないだろうか。

世界の終わりは
風が吹き荒れている世界かもしれないと想像するようになった。
静寂が訪れるのはその後のこと。

2014/1/20  午

20年ほど前、夫のモロッコ土産は
ベルベル人のストール、馬のしおり、サンドローズ。
馬の“しおり”といっても、子どもが手遊びでつくる草の編み型で
紙の間にはさんであったので、そう呼んだだけ。
(それに、馬は私にくれたわけじゃないしね、だから現物がない)
モロッコの子ども達が、ナツメヤシの葉かなんか摘んで、せっせと作っては
小遣いかせぎに、観光の白人に買ってもらったんだろう
でも日本人は尊敬すべきカラテマスターだから(と言ったかどうかしらないが)
タダでくれたらしい。

のびのびと気持ちよさそに走ってる。
ムスタングみたい(車じゃなくて)
とてもかわいいので、真似して編んでみた。

笹、ススキ、マキ(手裏剣つくったヤツ)、ヒメヤシ、リュウノヒゲ。
いろいろ試したけど、シュロが一番、しっくりきた。
本に挟んでおくと縮みも少なく、ながいこと緑を保っているところもいい感じ。
逆に乾燥させると、隙間が広がってトレリスみたいになるのもまた、おしゃれ。

シュロは生活必需品だったから、古い家には必ずといっていいほど植えられている。
近所のおじいさんの庭はシュロ林だったので
何に使うか説明して、剪定後の葉をくださいとお願いしたら、
わざわざ新しいのを切ってくれた。
シュロの葉は、2、3日ほどはつやつやしているが、
その後は急速に乾燥がすすむので、急いで作らなくちゃいけない。

ばん馬、太っちょ、ヤセ、仔馬。
試行錯誤しながら、いろいろ作ってみた。
四本足も素敵だけど、二本足でも十分伝わる。
尻尾と後足以外は、タテ半分に裂いて、2枚の葉で編んでみた
頭のところは、さらに幅を半分にして、細かく。
私の馬はハミやオモガイをつけているので、野生馬ではないのね。
それでも走ってるー!

たくさんできたので、子ども達にあげた。
その後も、時々つくっては、郵便や荷物のスキマに入れて、友人知人に送った。
ある時、みやげもんの本で、それとそっくりなのが、東北にあるらしいと知った。
3年ほど前、作家のやえがしさんが「旅行にいったので」とお土産に送ってくださった。
実物と初のご対面。
秋田の「イタヤ馬」(写真右側)
こちらは、イタヤ杉の樹の皮をつかうらしい。
モロッコと秋田、こんなに離れているのに良く似ている。
どんな歴史があるんだろう?
なにかつながりはあるのかな?
勝手に想像して楽しみたいから、詳しいことは調べていない。
そういえば、馬を模したものって世界各地にある。
お盆飾りの精霊馬、スウェーデンのダーラヘスト、モンゴルの馬頭琴。
馬は、犬と同じように、人間の周辺で飼いならされてきた動物だから。

それにしても、野生馬って、世界に一種類しかいないそうだ。
モウコノウマ。
モンゴルにいる。
それも、一時は絶滅しかかったのを、動物園などにいた馬から増やした。
…と言っているから、完全な野生馬ではないのかな?
ちなみに、シマウマは野生馬とは呼ばないし
アメリカのムスタングや日本の御崎馬は、飼育馬が野生化した種ということらしい。

モウコノウマ、この顔はどこかで見たよ。
ショーベ壁画の馬の顔にそっくり!
たくましいアゴ骨。丸い瞳。短いたてがみ。
きっと、足も短くて、後ろ足には、縞の模様がはいっていたんだろう。
アラブ馬は、それはそれはかっこいいけど、
ロバやずんぐりの馬たちも、好き。

以前、馬雑誌のお仕事をした時
「馬は血筋で走るんだ」と教えてもらった。
早く走れる馬は、アラブの血統と決まっている。
ただし競技となればわからない。
「走れる」というだけで、「走る」のとは違うから。

シュロが手に入ったので、年明けに作ってみた。
作り方、忘れてなかった。(写真左)

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